認知症って予防できるの?生活習慣をチェック!

認知症は予防できるの?

認知症とは病名ではなく、脳の機能低下きのうていかによって起こる特定の状態を指す言葉です。認知症を引き起こす病気は主に4つありますが、代表格はアルツハイマー病と血管性けっかんせいの病気とがあります。今回はその2つの病気に絞って予防法を解説していきます。

まずアルツハイマー病の原因はなんでしょう?近年のもっとも有力な仮説は、アミロイドβというたんぱく質が脳内にたまって老人斑ろうじんはんという物質を形成し、それが神経細胞しんけいさいぼうに障害を与えて脳が萎縮いしゅくしていくというものです。蓄積ちくせきのメカニズムについては、まだ完全には解明されていませんが、加齢などにより分解や排出がうまくいかなくなると、毒性どくせいの強いアミロイドβが溜まり始めると言われています。蓄積を防ぐ特効薬はなく、影響を与える生活習慣として、睡眠と食事との報告がなされてます。さらに、アルツハイマー型認知症は糖尿病とうにょうびょうという生活習慣から引き起こされる病気との関連が強く、それらの予防や治療は、確実に間接的な認知症予防となります。

また血管性の病気が原因の認知症は、脳血管性のうけっかんせい認知症とよばれています。脳血管性認知症は、脳梗塞のうこうそく後に発生しやすいと考えられている認知症のため、多発梗塞性たはつこうそくせい認知症とも呼ばれています。そのため、予防方法の基本は脳血管疾患のうけっかんしっかんと共通しています。生活習慣を改善していくことが何よりも大切です。

生活習慣と5つのポイント

では生活習慣のどのような点に気をつけるとよいのでしょうか?ここでは5つのポイントを解説します。

①食習慣に気をつける

よくかんでバランス良く食べるという当たり前のことを大切に。バランスの良い食事として和食や地中海式ちちゅうかいしき(肉や卵、乳製品を控えめにして、野菜と豆、穀物と魚を中心に組み立てる食習慣)がおすすめです。活性酸素かっせいさんそによる老化を防ぐ働きがある緑黄色りょうおうしょく野菜やビタミンC、脳梗塞の予防効果が期待できる魚をしっかり摂取できる構成となっています。

②運動習慣を取り入れる

生活習慣病予防としても運動は大切なのですが、そもそも体を動かせるのも脳が機能しているから。運動は脳を刺激することにもなります。また、腰や関節に疾患があり痛みや動きの制限があると、認知症になった場合、症状が急激に進行してしまうことも多くあります。運動習慣を身につけ、体のメンテナンスを行いましょう。

対人接触たいじんせっしょくを増やす

友達や家族とおしゃべりすることも、脳を刺激します。言葉をつかってコミュニケーションをとることは脳の全体をしっかりと使う活動の一種です。また認知症の症状が出始めたときに、家族や隣人との人間関係に問題があると、閉じこもりやうつなどの症状につながることがあるため、日頃から交流をしておくことが大事です。

④睡眠習慣を整える

アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβは、脳が活動したときに発生する老廃物ろうはいぶつの一種で、ノンレム睡眠(脳も体も眠っている状態)のときに脳内から排出されるという性質を持ちます。認知症発症リスクを調べた研究では、7時間の人に比べて6時間以下や8時間以上の人はリスクが高まるという結果も出ているため、6時間〜8時間を目安に規則正しい睡眠をとるのがよいでしょう。

⑤達成感を感じながら続ける

一番大切なのは、無理なく続けられることです。どれだけ効果がある予防法でも、続けなければ意味がありません。将棋や数独など、特に認知症予防と銘打っていなくても、大好きな趣味があれば、それを続けられる環境を整えることが認知症予防になります。また生活習慣といった地道な改善は記録をとって、達成感を感じる工夫をつくるとよいかもしれません。

認知症予防のための食事とは

2015年、アメリカのラッシュ大学医療センターの研究グループが、「マインド食」がアルツハイマー型認知症予防につながるという研究結果を発表しました。「マインド食」とは、心疾患しんしっかんの予防に効果があるとされる「地中海式食事法」と、高血圧を防ぐとされる「ダッシュ食」を組み合わせたもの。地中海式は野菜、豆、果物をメインに、オリーブオイルや魚介類を積極的にとる食事法で、ダッシュ食は脂肪やコレステロールを控え、塩分排出作用のあるミネラルを増やすものです。積極的に取るといい食材を10項目、なるべく控えた方がいい食材を5項目に分けてリストアップしています。

<積極的に取るとよい食材>

・緑黄色野菜(週6日以上)
・その他の野菜(1日1回以上)
・ナッツ類(週5回以上)
・ベリー類(週2回以上)
・豆類(週3回以上)
・全粒穀物(1日3回以上)
・魚(なるべく多く)
・鶏肉(週2回以上)
・オリーブオイル(優先的に使う)
・ワイン(1日グラス1杯まで)

<控えた方がよい食材>

・赤身の肉(週4回以下) 
・バター(なるべく少なく) 
・チーズ(週1回以下) 
・お菓子(週5回以下) 
・ファストフード(週1回以下)

紹介したマインド食の項目はアメリカ版のもので、日本人にどれだけ効果があるのかについては研究段階にあります。ただ、食材に気をつけることで生活習慣病の予防、ひいては認知症の予防になることが期待できます。また、日本の食生活は塩分の摂取量が多くなりがちです。塩分の過剰かじょう摂取は高血圧のリスクを上げる要因であり、最終的に脳血管を傷つけ動脈硬化どうみゃくこうかを引き起こし、認知症リスクを高めます。塩分の摂りすぎにも十分に注意しましょう。