認知症…?と思ったら【症状発見のポイント】
あれ、もしかして。「ボーっとしている時間が長い」「もの忘れがひどくなった」などご自身やご家族に認知症のサインが出ているかもしれません。認知症という言葉を聞くと、徘徊や無気力といった症状を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、これら以外にも様々なものがあります。
65歳以上のだいたい6人に1人が認知症とされているなかで、本人を含めて周囲の人がどのように認知症と向き合うかは非常に重要です。より早い段階で症状に気づき適切に対応することができるよう、まずは小さなサインを見逃さないようにしましょう。認知症は、早い段階で発見できれば、進行を遅らせることができ、良好な状態を保つことが可能です。次のような行動は認知症を発見するきっかけとなります。
認知症のチェックリスト
- さっき話したことを何回も話す
- 何度も同じことを聞いてくる
- 買い物するときにお札ばかり出す(小銭が貯まっている)
- 出かける前に何度も持ち物を確認する(かばんの中身を出し入れする)
- 同じものを何回も購入する(卵やトイレットペーパーなど)
- 料理や買い物に時間がかかるようになった
- 片付けができなくなる
- 出かけることが少なくなった
- 新しいこと、新しいものは嫌がる
- 怒りっぽくなった
- あまり話さなくなった
- 財布など、どこに物をおいたかわからなくなる
- よく探しものをする
- お金の管理ができない
- 周りのことに興味を持たなくなる
- ものや人の名前が出てこない
- 日付や時間を間違える
- いつもの慣れた道で迷ってしまう
- 薬の飲み忘れがでてくる。(数が合わないなど)
- 電話に出ても誰と話したか忘れる。
- 約束を忘れる。おぼえていないなどもあります
知っとく認知症【初期症状と進行について】
認知症の種類によって初期症状は異なります。多くの場合、もの忘れをきっかけに気づくことが多いようです。また、比較的初期から「買い物するときにお札ばかり出す」「料理や買い物に時間がかかる」という判断速度や作業能力の低下が見られます。
認知症の進行が進むと、初期よりも記憶障害が進行して記憶が保てず、自立した生活を送ることが難しくなります。食事した直後に「食事はまだか」と言ったり、自宅にいるのに「家に帰ります」と言ったりするのが中期の特徴です。重度の症状になると、記憶障害がさらに進行し、性格にまで影響を及ぼすこともあります。「家族であっても誰なのか認識できない」「表情が乏しい」といった症状も出始めます。歩行障害や運動障害によって寝たきりに近い状態になるため、より手厚い介護が必要になります。
ただひとくちに認知症といっても、症状が表れ方は個人によって大きく違います。ですが、どのような症状にせよ、本人にとってはとてもつらいものです。認知症を自覚していることはなくても、周囲と話がかみ合わない、誤解されていると感じて、漠然と強い不安や混乱、怒りを覚えます。そして、「これまでできていたことができない」「急にわからないことが増えた」という自信喪失から感情や意欲にも変化が現れ、認知症ではなくうつ病などを疑われることもあります。
認知症と向き合うためには、症状を持つ本人の内面を周囲の人が理解する必要があります。家族や友人が認知症によって別人のようになったと感じた時、ショックを受けるかもしれませんが、認知症を患う本人も大きな不安を感じています。そのことをよく理解し、本人に合った治療を続けていくことが大切です。
どう付き合えばいいの?【進行を遅らせる方法】
大きく分けて2つの方法(薬物療法・非薬物療法)で認知症の進行を遅らせることができる可能性があります。
【薬物療法】
薬物療法を続ける場合は、薬の副作用による体調異常の有無をしっかり観察しましょう。少しでも気になることがあればメモを残し、医師と相談しましょう。複数の医療機関を利用の場合は、お薬手帳を活用して、薬の飲みあわせなどの情報をしっかり管理しましょう。
【非薬物療法】
非薬物療法を行う場合は、本人が楽しんで取り組めるものを選びましょう。認知症が進行するとできなくなることが徐々に増えていきます。無理なくできそうなことをすすめ、自尊心を傷つけないよう配慮しましょう。
ここではご自宅でできる非薬物療法をいくつかご紹介します。
脳トレ
頭を使うことで脳を刺激し、認知機能の低下を予防します。計算ドリル、囲碁や将棋などで脳のトレーニングを行いましょう。
適度な運動
ストレッチやラジオ体操など、適度な運動を行うことが大切です。生活リズムを整えることで夜間の徘徊防止にもつながります。
回想法
脳科学では、人が「懐かしいなぁ」と感じるとき、脳の血流量が増加して認知機能が高まることがわかっています。このメカニズムを利用した認知症セラピーが「回想法」です。たとえば、若い頃の写真などをみて昔の記憶を思い出してもらいながら話を聞きます。 当時の思い出を誰かに伝えることで脳が活性化され、自信を取り戻したり、気持ちが落ち着くこともあります。
回想法は1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱し、認知症の方へのアプロ―チとしてとても注目を集めています。今までの自分の人生を振り返り、人生を再確認することで、現在の自分も肯定的に受け入れやすくなり、精神的な安定がもたらされるということが分かってきたからです。昔のことを想起しやすくするために、写真や歌、本、新聞、映像、生活用品などを用いて五感を刺激すると高い効果を得られます。ご自宅で実施する場合には、専用の教材等を用いて実施すると非常に効果的です。
認知症の方に接するとき、何度も同じことを聞かれるなどで、つい強く言い返してしまうことがあるかもしれません。しかし怒ったり、否定するのは禁物です。時にはご本人とともに、症状をあるがままに受け止め、地域包括支援センターやデイサービス、医療機関を活用しながらうまく症状と付き合っていくことが必要です。