<かぞくのプロフィール> 母:斉藤ヌイ子さん(78歳) 娘:山内美香さん(53歳)大学進学とともに実家を離れ、現在は熊本市内で暮らす美香さん。月3〜4回、実家のある阿蘇に戻り思い出ドリル「おとなの学校メソッド」を行う。必ず母のヌイ子さんがお茶とお漬物を出してくれるそうで、1回30分くらいで楽しみながら自分たちのペースで進めている。時には3歳になるひ孫さんと一緒に、3世代で一緒に学ぶことも。(※ご年齢は、取材当時のもの) |
お母様のヌイ子さんが電話で何度も同じことを言うのが気になったという娘の美香さん。まずは、学習プラザでの体験授業への参加を薦めたことが、始めるきっかけに。その後、ご自宅で思い出ドリル「おとなの学校メソッド」を続けているという山内さん親子にお話を伺いました。
初めての授業のこと
ー学習プラザでの体験は、それぞれどう感じましたか?
娘:母を送っていったときにどんな雰囲気かちょっと見たのですが、母がものすごく楽しそうで本当にびっくりしたんですよ。
一生懸命おしゃべりしていたり、こんなに笑うんだって思ったのと、あんなに勉強が好きだったんだ、と思って、なんだかすごく感動してしまって、その場ですごく泣いたのを覚えてます、嬉しくて。
母:授業が楽しかったんですよ。授業でも勉強できてよかったんですが、それじゃ足りないと思って、メロンの種類の授業だったんですが、選果場に行っていろいろ調べたりしたんです。それを報告したら、今度はコーヒー豆を調べてくださいってまた宿題が出て。宿題もどんどん楽しくなっていきました。
お母様の変化について
ーご自宅で思い出ドリル「おとなの学校メソッド」を始めた後、お母様に変化はありましたか?
娘:一番の変化は、やる気というか意欲的になったことです。これまで、私や娘の仕事の用事などで、ひ孫を実家に預けなければいけないことがあって母にお願いするんですが、「それは、難しいよ」なんて言われることが多くて、本当に深々とお願いしてたんですね。でも、最近では、母の方から電話が来て「今月は出張とかないの?」って言ってきて。自らひ孫の世話をするよってことですよね。
親子の関係の変化について
ー親子の関係に変化はありましたか?
娘:2人会ったらいつも小言か喧嘩かだったけど、教科書を使うようになってから、不思議となくなりました。ほんとに今までは小言か喧嘩ですよ。「あれやってる?これやってないの?」とか言われたり、私も負けじと対抗したりしてました。
あと私は弟がいるんですけど、母は弟の方を可愛がっていたと思ってたんですね。弟には優しいんだろうな、って。だから、またそれも喧嘩っぽくなって。
でも、教科書を使った時に思い出話に行くんですよね、やっぱり回想法がベースだから。
「あなたが小さい頃はね」という風に母がいろんな思い出話をしてくれて、自分の中で「あれはこういうことだったんだ」って、一つひとつ思い出や誤解が紐解かれていく感じがしたんです。それで、お互いに笑いながら会話するっていうふうに変わっていったんですよね。なんかそれがすごく私は新鮮で。
母と話していると、一言ひとことがとっても楽しくなったんですね。
50年掛かったけど、喧嘩じゃなくて、お互い笑いながらコミュニケーションができることに気づけてよかったなって。
母:本人は弟の方が好きでしょっていうけど、なんで同じ私から産まれた子どもになんで好き嫌いがあるのって。あんたは考えがしっかりしてるから、私は弟の方にいろいろと言うだけで、誰も差別なんてしてないって。傍目に見たらひいきしてると思ったんでしょうね。今は、娘が「お母さん、お母さん」って言ってくるし、それで思わず笑っちゃうんですよね。あら、最近はずっと私のこと「ばあちゃん」って言ってたのに、と思って。
娘:不思議なんですよね、今まで20年近くばあちゃんだったのに、でもこの教科書を使い出したら、「お母さん」って呼ぶようになった。ばあちゃんはおかしいなって思って。そこでまたちょっとくすぐったいような感じで、笑っちゃうんですよね。でも「お母さん」って呼ぶようになったらスムーズに話がいったんです。「おばあちゃん」は申し訳なかったな、と私の中で反省しました。
ー「お母さん」って呼ばれてどうでした?
母:そうですね、くすぐったかたけど、嬉しかったです。
これからの目標について
ーこれからの目標について教えてください。
母:私もこのひ孫がせめて中学生か、嫁さんになるまでは絶対に生きなきゃと思っているんです。色々勉強したからこそ、娘のありがたさもわかりますし、頑張らにゃいかん、と。元気でいるためにまずは何しろ1日必ず笑う、散歩する、などは常に心がけております。
娘:私は、母と一緒に旅行に行きたいんですよ。もう一つの夢は、母がひ孫の結婚式で花嫁さんの介添えをやってくれるといいなと。これは一緒にがんばる目標ですね。でも、たぶん長生きするような気がするんです、本当に。